当社人財開発コンサルタント:坂井博文(語り手)
WEB販促アドバイザー:今城裕実(聞き手)
今城:本日は、株式会社トータル・マネジメントの事業内容と、その中核となっている「合計業績」と「伴走型コンサルティング」について、コンサルタントの坂井さんにお話をうかがいます。坂井さん、どうぞよろしくお願いいたします。
坂井:こちらこそ、よろしくお願いします。
変革のスタートは、合計業績への理解
今城:早速ですが、貴社がされている事業を簡単にいうと、どういったものでしょうか?
坂井:一言でいうと、企業の変革推進ですね。
業績を上げていく、それも業績の質、組織の質を変えながら業績をアップさせていきます。
それを、シリーズ研修という形で社員教育を通じて行うのが、事業の中心です。
今城:具体的には、何をどう変革するんですか?
坂井:社員の皆さんに、行動そのものを変えてもらいます。
従来と同じことを同じようにやっても、結果は従来と同じですから。
何をする必要があるかというところを見直します。それこそ、大きなところから小さなところまで。
そして、それをどのように変えるかのポイントを絞り込んでいく。
何をどう変えるかは、私が指示するのではなく、実践的な研修の場で社員さん自身に考えてもらいます。
今城:行動を変えようと思ったら、思考を変えないといけないのでは?
坂井:その通りです。
そもそも「業績」の捉え方を変えてもらいます。
目の前の業績しか見ていないことがほとんどですから。
そうじゃない、と。
今だけではなく、変革された未来、先の業績を見てもらう。
現在の業績プラス、変革された将来の業績。それが合計業績の考え方です。
今城:なるほど。現在と将来を合わせて、合計業績ですね。
坂井:それだけではないんですけどね。
そういう時間的な合計、そして空間的な内部・外部の合計もすべて合わせて俯瞰的にとらえるのが、合計業績の考え方です。
そのために必須になるのが、社員のプロ意識なんですよ。
プロ意識がない社員は、どうしても従来型のままのことしかやれません。
社員の思考・現場の空気を変える、実践的研修
今城:主に研修の対象にされているのは、中間リーダー層とうかがいましたが…
坂井:そうですね。会社によってもは、経営層クラスから入る場合もあれば、現場担当者から入る場合もあります。
しかし、一番効率がいいなと思うのは、真ん中ですね。真ん中の中でも、比較的上の層です。
なぜかというと、あまりに現場寄りすぎると上が見えていない。自分の数字は見えるんですが、全社的にものを見る視点が弱いんです。
今城:先ほどおっしゃった、プロ思考にまだなれていないということですね?
坂井:ええ、そうなんです。でも逆に上の方に行きすぎると、大局は見えるんですが現場がわかっていない。
その点、ミドル層ならどちらも見えていますから。
そのミドル層を見ると、我々からは何が足りない会社なのか、何をどうしたら変革が起こせるのかがわかってきます。
今城:ミドル層の方が変われば、うまくパイプ役になるというか、会社全体に影響が出やすいんでしょうか?
坂井:はい、ミドル層は上からも下からも見られていますからね。
そして、その変化という結果をもって私たちが上部層に提言していくこともしやすくなります。
例えば1年間この組織のミドル層を見て、何が問題で、何が原因で、何をする必要があるというのをまとめて、上に提言してさらなる変化が起こる、と。
するとまたミドル層も、よりよく変化していくという相乗効果が起こります。
今城:実際の研修では、何をどんな風に教えるんでしょうか?
坂井:私がお伝えするのは、物事の捉え方・考え方です。
それからテーマを絞り込んでもらって、そのテーマでいいのかも含めてグループで意見交換しながら研修をしていきます。
今城:ワークというか、グループディスカッションの時間が多いんですか?
坂井:ええ、多いです。圧倒的に多いです。
今城:テーマというのは?
坂井:大局の目標は、来期の業績をどう上げるかです。
そのために、何をやるか。どうやるか――それがテーマ。
今城:大きな目標に向かうための、マイルストーンのようなものですね。
坂井:ええ、そんな感じです。
それを、目的・手段・成果・納期で整理して、考えてもらいます。
どうなったらそのテーマが成功で、何を使って、いつまでにやるか。
この積み重ねを繰り返すのが仕事です。
始めは、それがなかなかわかっていない人が多いんですが(笑)
今城:ほとんどの人は、意識せずに仕事をすることが「目的」になっていますから……
坂井:そうです。そこを意見交換しながら、気付いていってもらう。
自分たちが毎日やっていることは、何のためなのかと。
そういう捉え方が当たり前のところまで持っていくんです。
人間、わからないことはできませんから、まずそれをわかってもらう。
今城:それがわからないと、テーマを決めて計画を立てられないんですね
坂井:そういう捉え方をせずに、計画を作らせた場合には単なる行事予定表になりがちです。
もしくは、単なる目標の細分化。それじゃあ意味がない。
テーマは何か。そのための時間はどれだけあるのか。その残された時間で、何をして、どこまでの成果を上げるか。目的・手段・成果・納期で考えるとは、そういうことです。
目的のためには攻めにいくべきとなったなら、重点ターゲット×打席数確保×打率アップ。
訪問すべきところはわかっているのか?
お客様の初回面談からクロージングに2ヵ月かかるなら、2ヵ月前からアポイントを取って、必要な面談量を必要なタイミングで取れなければアウトです。
今城:6月に成約を取りたいなら、4月にはお会いしていないといけない、ということですね。
坂井:ええ、遅くとも、です。
こういう、長いスパンで俯瞰的な視点・ゴールに向けて逆算していく思考を、ワークを通して作り上げていくんです。
研修の具体的な内容-導入編・実践編
今城:具体的に、研修がどんな風に進められるかを教えてください。
坂井:導入編と実践編に分かれています。
まず導入編は、わかってもらうこと中心。目安は2日です。
一日目に捉え方、役割、責任、プロ意識、戦略思考、計画の立て方、をレクチャー中心に。
2日目は、それに基づいて課題設定、計画作成を実際にやっていただきます。
その段階ではまだ、単に行事予定表のようなものを出してくることも多いのですが(笑)
それは発表させてフィードバック、作り直してまた発表してもらうことで、考え方を浸透させていきます。
今城:そこまでが導入編ですね。
坂井:はい。その段階で作った計画を実際にやってみてもうまくいかないことがザラです。
今城:現場や現実に即した計画になっていないということですか?
坂井:作った計画書に対しては、報告書を提出してもらっています。
計画した項目ごとにやったか・やっていないかを書いてね。
実践した結果うまくいったか・いっていないか。さらに、実践を通じてうまくいった理由・うまくいかなかった理由を考えてもらう。
これをフォーマットにまとめて発表してもらいます
何がうまくいったのか・いかなかったのか、なぜなのかさっぱりわからないという時には、意見交換していきながら掘り下げて、教訓を得て、次の計画に活かす――という流れです。
ここまでが実践編の1日目。
2日目は、その教訓をもとにして次の課題と計画です。
今城:私の場合なんですが、課題や目標を書けといわれると、ちょっといいように書いてしまうというか、達成できない目標を書いてしまうことがあります。
坂井:誰でも、その傾向はありますね。
だから、課題を考える前に現状分析をしてもらいます。
例えば、目標が来期の業績アップだとすると、テーマを決める前に今のメンバーで・今のやり方でやっていったら、どのぐらいいきそうかを考えてもらいます。
シビアに予測してください、希望じゃありませんよ、と釘を刺した上で。
でないと、みんな希望を書こうとします。
今城:そうですね。
目標というと、頑張るぞという気持ちで、このぐらいいき「たい」という願望を書いてしまいます。
坂井:今のメンバーで、今のやり方で、今の努力でやったら、最低どのぐらいいけそうかとシビアに見ると、目標とのギャップが大きいことに気が付きます。
そうすると、目標にこのぐらい不足しているとわかる。
この不足を何で埋めるのか?それが次のテーマになってくるわけです。
このシビアにギャップを見るということをしないと、希望的な目標を掲げて頑張りましょうだけで終わってしまうんですね。
今城:抽象的な「目標を立てて一生懸命やる・頑張る」というものとは、ずいぶん違いますね。
坂井:何をどう頑張るかも大事ですし、押さえどころを抑えずに頑張っちゃうと、どう頑張ってもエネルギー効率が悪いんです。
ある程度、体感してみないとわからないんですが、効果が出やすい頑張り方がある。
この、計画を立てて実践して~を何度か繰り返して初めて、わかってくるものがあるんです。
長期契約が多い理由は……
今城:どういう頻度で研修を受ければ、変化が見えてくるものですか?
坂井:目安として3ヵ月に一度ぐらいが最もいいと感じています。
スパンが短すぎてもダメ。打ち手と効果が出る前に次の研修が来てしまいますから。
でも、間が空きすぎると、その間に行動が戻ってしまうことが多々あります。
3ヵ月だと、ちょうど打ち手に効果が現れているぐらい。
その3ヵ月の周期を、どんなに短くても1年間。
今城:最低4回ということですね。
坂井:目安は3年ですね。
1番長い顧客は、7年目に入って、今も続いています。
どんどん業績を伸ばされていますよ。
今城:コンサルタントの手を借りながらPDCAを繰り返して、社員の思考を変えていくわけですね。
坂井:PDCAだけでなく、そこにS、strategy、戦略が入ります。
そして、目的達成のために「やること」を決めるだけでなく、「やらないこと」を決めるのも重要なんです。
今城:やらないこと、ですか?
坂井:そうです。
昔なら「できるまでやれ」で、残業で時間を増やすことも可能でした。
今は残業できないでしょ?
で、従来と違うことをやろうとするなら、何かを捨てないとムリですよね。
例えば、ムダな会議を捨てるとか。
ムダな移動、ムダな訪問、ムダな書類や手続きを捨てるとか。
これを決めてもらいます。
なかなか捨てられないみたいですけど(笑)
今城:やることを決めるより、難しそうですね。
坂井:守成型の上司がいる現場だと、なかなか大変です。
上に立った人間が変えていく姿勢が強いところは、スムーズですね。
本気で変えたい、目的を成し遂げたいという想いを上司が持っていなくてはなりません。
これもプロ意識ですね。
今城:古い体質の職場は変わりにくいのですか?
坂井:いえ、歴史のある会社で長年のやり方が浸透していても、トップが変革に意欲的であれば大丈夫です。
年令も関係ありません。ひとえに意欲です。
最初は1人、そして数人と変わり始めて「おや、あっちの方がよさそうだぞ」という空気ができれば、一気に流れができて組織の体質も変わります。
次々と変化が起こっていく様は、ワクワクしますよ!
営業成績最下位だった支店が、全国トップに躍り出たり。
そうすると、あっちの支店・こっちの支店からも声がかかって、忙しくなります。
今城:ああ、だから長期契約になるんですね。
坂井:ええ、結果を出せば、契約は続きますし、次々と他の部署・他の支店へと広がって、その企業様と長いお付き合いになります。
業界でも名の知れた企業様と何年も続いているのは、それだけの結果と信頼があるからだと自負しています。
それとね、私の場合は1業界、1業種、1業態、1社、と決めているんです。
それは、最低でも日本一、できれば世界一になってほしいんでね。
深く関わってわかっちゃってるでしょう、その業界のこともいろいろと。
もしこれで競合会社にいったら、勝ち方がわかってしまっているので……
だから、同じ会社と長いお付き合いになることが多いんです。
コンサルタントという概念を超えた伴走型コンサルティング
今城:研修会社だと、春だけとか年に1回の行事のようにされているところが多いですが、そうした単発研修の会社とはまったく別ですね。
坂井:それは、目的が違うからでしょうね。
今城:普通、研修というと、いわゆるノウハウというかレクチャー中心ですが……
坂井:ええ。
そういう研修は、例えば新任管理者として何をどうとらえてどうすべきかというのを、年度初めなどに教えてわからせるのが目的。
しかし、わかり方には個人のレベル差があるんですよ。しかも、わかったからといっても実際にやるのとは別問題です。だから結局、わかることだけを目的にしている単発研修では、結果は伴いません。
今城:やはり御社の事業は、研修・研修講師という概念には当てはまりませんね。
しかしコンサルタントといっても、アドバイス型のコンサルタントとも全然違う。
コンサルタントというと、アドバイスと称して好き放題いって、高いお金を支払って業績が上がらないというイメージも一部ありますし(笑)
坂井:まあ、そういう方もいらっしゃいますね(笑)
同じコンサルタントといっても、役割がまったく違いますから……
今城:ええ。コンサルタントという肩書きですが、個人ではなく企業全体のコーチングに近いようにも思います。
坂井:たまたま、コンサルタントという言葉を使っているだけですね。どうもピッタリくるものが他になくて。
企業に寄り添って、一緒に走りながら成長していく。そして、結果出す。
そういう姿勢なので、『伴走型コンサルティング』といっています。
今城:やっていることは研修、でも研修講師でもなく、コンサルタントという枠にも収まらない……たぶん、受けてみないとわかりませんね。
坂井:そうですね。
ただ、目的はあくまでも合計業績の実現なので、研修講師ではないことは確かです。
途中、勉強が必要かもしれないし、いろいろとやることもありますが、それは手段であって、ゴールは合計業績の実現。
今城:いわゆる研修だけをやっていると、研修のあとみんながちょっとやる気になって「ああよかった」で終了して、そのやる気はまた時間とともに落ちていきますよね。
坂井:そうなんですよね。
市場はどんどん変わっていくので本来テーマも変えていかないといけないんだけど、普通の研修では教えることが決まっていますから。
次に市場が変わったら何もできない、これでは意味がないし違うと思うんです。
市場がどう変わろうと、自分たちで何をどうとらえ、どうやっていけばいいか。
それがわかってできる、ここまで持っていかないと。
今城:お話をうかがっていて、「考え方」教えている――というか、実践を通して訓練しているように感じました。
坂井:考え方と、やり方。その両方です。
考え方がベースですけどね。そして押さえどころ。これが重要です。
時間的な押さえどころ、空間的な押さえどころ、人員的な押さえどころ。
何より大切なのは、人を育てること
今城:重要なのは、「押さえどころ」ですか。
坂井:はい。これも、考え方のうちなんですが。
例えば、全員に同じように研修をしても、同じように理解して同じように実践できるかといえば、やはり個人差は出てきます。
今城:その場合は、どうするんですか?
坂井:そこで、普通ならできない人をできる人のレベルに上げようとします。
でも、私に言わせたら違うぞ、と。
目標の与え方も、人によって違っていいんですよ。
ある分野の目標が苦手なら、それは下げればいい。
その代わり、得意なことは他人以上にやってもらえばいいだけ。
そうしてこそ組織の意味があるんです。
今城:なるほど。目標は下げればいい、というのは目から鱗が落ちる思いです。
全員が総合力に優れているわけじゃないから、むしろ効率が悪いということですね。
坂井:そのとおり。
しかし、普通の管理職はどうしても、みんなを同じ目標まで頑張らせようとする。
それをやると、強みでなく弱みで勝負しないといけない人が出てきます。
そういう発想自体が、間違いだと思うんですよ。
それぞれの強みを活かして、組織力を最大にするというのが一番の方法です。個人事業ではなく、学校でもなく、会社なんですから。
今城:例えば、Aさんはある業務を確実にこなすということなら目標達成できるのに、方向性の違う高い目標を与えて達成させようとするのは、組織の総合力を下げる結果になるんですね。
坂井:そうなんです。
よくある事例としては、あるイベントにお客様を呼んでこようという話になった時に、1人あたり10人呼んでくるという目標を立てるわけです。
しかし、人脈もない新人が10人呼んでくるのはものすごくハードルが高い。
逆に、ベテランでそれなりにリストも持っている社員なら簡単に達成できる。
そうすると、ノルマを達成したベテランはそれ以上の努力をしない。
そして新人の方は、ノルマのためにそれにかかりっきりになってしまう。
今城:それなら、ベテラン社員に20名集めてもらい、若手は目標5名にしてイベントの準備などに注力させる方がいいですね。
坂井:それが、総合力、組織力です。
もしくは、若手がまったく人脈を持っていないなら、ベテランに同行させ、やり方を吸収させて教育をすればいい。そうすれば、将来の組織力を上げることになる。
同行させることで、一時的には業績が下がるかもしれませんが、長い目で見てプラスになるなら、その方がいい。
こうした二律背反も、空間的・時間的に考えて合計業績ではどうなのか、という視点で見ていけば判断がつくんです。
今現在でなく、局所的でなく、社員個人ではなく、全体の力を上げていく。これが重要ですね。
今城:そういう視点を持っていないと、目標を一律で与えて頑張らせてしまうことが多いのは、よくわかります。私も、思い込みがあったことに気付かされました。
坂井:一律型でやっていると、ムリが出てきます。
昔なら、やれるまで残業させて頑張らせることもできたかもしれませんが、今は限られた時間・限られた人員で、最大の業績を上げなくてはいけない時代です。
時間や人員を投入すれば案件が取れていた、成長市場の時代とは違いますから。
案件は減っていても、どこも業績を上げたいのは同じなので、競争が半端じゃない。
知恵を使っていかないと勝てないんです。
今城:限られた人員・限られた時間というリソースを、どれだけ効率よく最大に動かせるかですね。
坂井:人・モノ・金・情報・時間といいますが、根本は人なんですよ。
情報の使い方、金の使い方を決めるのは人ですから。
人の力を上げることができれば、強いです。
今城:モノを使うのも人、時間を使うのも人、ですものね。重要なカギは、人なんですね。
坂井:ええ、人を教え育てることが、組織全体の変革につながるんです。
今城:坂井さんが、教えることに力を入れておられる理由がよくわかりました。
本日は、素晴らしいお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。